●『更新カルテから見るスキル標準活用企業の進化』
特定非営利活動法人 スキル標準ユーザー協会 理事
スキル標準キャリア開発コンサルタント 松本 道典
1.スキル標準活用企業認証の重要性
私は審査員として、スキル標準活用企業認証が企業の人材育成や組織強化においていかに重要な役割を果たしているかを日々実感しています。この認証制度は、企業がスキル標準をどの程度活用しているかを「見える化」し、客観的に評価する仕組みとして2016年に開始され、多くの企業から評価を受けています。
特に、企業が持つ課題解決力の向上やデジタル人材の育成促進が、この認証制度を通じて形となり、継続的に実現されている点に大きな意義があります。これらの成果を見るたび、審査員として大きな喜びを感じます。
この認証制度の特徴は、「成果を上げ始めている企業を広く紹介し、スキル標準の認知と活用を全国に広める」というビジョンに基づいて運営されている点です。
これにより、企業の努力や成功事例が他の企業に有益な参考資料となり、業界全体での情報共有が促進されます。
事業形態が異なる企業であっても、活用の工夫や運用課題の対策、経営レベルでの目的設定など、多くの点で共通の学びが得られることから、こうした情報を活用しない手はありません。
このような取り組みの循環が、日本全体のIT人材力向上につながると信じています。
2.審査員としての視点:スキル標準活用企業認証の意義
審査員の役割は、企業の活動を公正かつ客観的に評価することにあります。
スキル標準活用企業認証は単なる形式的な認証ではなく、企業がスキル標準をどのように活用し、人材育成や業務効率化といった具体的な成果を上げているかを詳細に分析します。
特に「Silver Plus」や「Gold」のランク以上においては、次の観点を重点的に評価しています。
・人材育成の実効性: スキル標準を活用した教育や研修が社員に浸透し、成果を上げているか
・組織全体への影響: 部門単位での成功に留まらず、企業全体で波及効果が見られるか
・持続的な運用: 単発の施策ではなく、定期的かつ長期的な運用が行われているか
今年も多くの企業から届いた更新カルテを拝見し、現状の認証レベルから一段上を目指すための取り組みが伝わってきます。その姿勢には、MVPを獲得しても次の目標に向かって挑戦を続ける大谷翔平選手のような姿を重ねてしまいます。
3.各認証ランクの特性と価値
認証ランクは6段階に分かれており、それぞれ企業の成長ステージに合わせた特性が設定されています。
「Blue」は、スキル標準への興味や基本的な知識を有する企業が最初に目指すステップです。この段階では、主にスキル標準を知ることに重点が置かれます。
一方で、「Silver」や「Silver Plus」は、実際にスキル標準を導入し、運用を開始した企業を評価するステップです。これにより、企業内での活用フェーズが加速します。
さらに上位の「Gold★、★★、★★★」では、実際の運用成果に基づき、成果の規模や持続的な活用度合いが細かく評価されます。このランクの企業は具体的な事例を公開し、他社のモデルケースとして業界全体の成長を促進する役割を担います。
4. 最後に:未来に向けて審査員としての想い
スキル標準活用導入の目的は、経営、現場マネジメント、個人の3つの視点で設定されるべきです。
この制度の本来の目的は、認証資格の取得を目指すことにとどまらず、それぞれの視点で設定した目的を達成することにあります。
現場での設計手法や最新技術が急速に進化する中、特に経営レベルでのビジネス貢献を意識した取り組みが希薄になりがちです。スキル標準導入の真の狙いは、まさにこの点にあると考えています。
毎年、多くの企業が更新カルテを作成する際、設定した目的の実現成果を検証し、新たな目的を設定するプロセスが、認証制度の根幹を支えています。
独自の工夫や取り組みを通じて成果を積み上げる企業は、新たな可能性を切り拓く力を持っています。こうした企業の活動を、私はこれからも全力で応援していきたいと思います。